上下歯列接触癖(TCH)

上下歯列接触癖とは

上下の歯が接触している時間は通常寝る時間も含めて24時間で20分くらいです。接触するということですから、かみしめて強く接触しても、ちょっと力を抜いて軽く合わせても、接触している時間ということになります。ご飯を食べたり、つばを飲み込むときも、上と下の歯が接触しますから当然この時間に入っています。つまり、1日に20分以上、上下の歯を接触させているとそれは癖ということになり、いろいろな弊害が起こってきたりします。

人間は口を閉じているときでも、安静空隙といって上と下の歯の間には僅かな隙間があります。口を閉じているときに上下の歯が軽くでも接触しているようでしたら、普通ではありません。歯が接触すると噛む筋肉が反応して緊張するのです。筋電図の測定からもこのことがわかっています。私はかみしめてないと思っている方でも、PCをやっているときや、物事を考えているとき、机の上で作業しているとき、寝ているときなど、知らず知らずのうちにかみしめてしまっている方は多いです。

以下どんな弊害が起こるか列挙していってみましょう。

1  顎関節症やその悪化

上下の歯が接触すると噛む筋肉にかみしめようとする反応が起こり、顎の関節が圧迫されて顎関節症が発症したり、悪化したりします。

2  歯の慢性的痛み

痛い歯をレントゲンなどをとって調べてみても虫歯も歯周病もないしその他にも何も異常がない。でも痛い。これは上下の歯を接触しすぎたために、歯を支えている歯根膜が圧迫を受け傷んでいるじょうたいです。かみしめをやめれば嘘のように良くなることも多いです。

3 歯根の破折や歯冠の破折

上下の歯を良く合わせていると、歯の頭や根っこが折れやすくなります。

4 噛む筋肉の痛みやこり

顔の筋肉には咬筋、側頭筋など噛むための筋肉がありますが、それが筋肉疲労をを起こしてだるい感じや、痛い感じを起こしたり、歯は実際には痛くないのに筋肉痛が原因で歯が痛いように感じたりすることもあります。

5 歯の詰め物、被せの脱離

当然長い時間噛みあっているわけですから力がかかり、歯の詰め物や被せものが外れやすかったり、割れやすかったりします。

6 慢性的な口内炎

上下の歯が接触すると舌は口蓋や周囲の歯に押し付けられ、ほっぺたの粘膜も歯に押し付けられ、舌やほっぺたの粘膜表面の血流が少なくなり、食品等による外傷をきっかけに発症した口内炎は治癒が遅れたり、すぐまた口内炎が出来たりします。また、口の中の緊張持続は唾液の分泌も低下させるため、さらに口内炎の治りが悪かったり、再発の可能性が高くなります。

7 歯周病の悪化

強かれ弱かれ上下の歯が接触しているわけですから歯周病という状態の悪い歯に力がかかります。そうするとさらに歯周病というのは悪化してしまいます。

8 入れ歯の痛み

食事をしていなくてもただでさえ噛んでいる訳ですから、入れ歯が沈下して下の歯茎の粘膜を圧迫しているわけですから、入れ歯が当たって痛くなりやすいです。

9 舌痛症(ぜっつうしょう)

上下の歯が長い時間かみ合っている人は、舌の筋肉も緊張して、歯に舌を押し付けています。そのため舌の表面血流が低下して、正座による足のしびれと同じ機序で感覚鋭敏が始まって、舌痛症という舌がヒリヒリしたり、違和感があり気になって仕方がない病気に発展することもあります。

10 舌やほっぺたをよく噛む

日中の上下の歯を合わせる癖が断続的に夕方まで続くことで噛む筋肉や舌の筋肉は疲労します。そうすると食事の際に、舌やほっぺたを間違って噛んでしまうことがあります。筋肉の疲労から生じることが多いので、夕食時におおいです。


★上下歯列接触癖の改善法

起きているときとはいえ、無意識にやってしまっている癖なのでなかなか改善するのも難しいかもしれませんが、本人のやる気次第といえるでしょう。

改善法その1:

家じゅうに20枚くらいは短冊型の紙に”かみしめない!”とかいて貼り付けます。とうぜん天井とか、ドアノブの近くにも。そうすることで注意を促します。

改善法その2:

定期的にその短冊の紙の貼る場所を変えます。人間短冊型の紙が同じ位置にあるとだんだん気にならなくなるものです。定期的に位置を変えることで注意力を維持します。

改善法その3:

家族や友達に話して気づいたら注意してもらいます。

改善法その4:

心に”噛みしめないぞ”と強く念じます。念じるだけでもかみしめる時間が減ることもあります。念じる強さが強いほどよいです。



以上、上下歯列接触癖、英語で略して”TCH”といいますが、それについてお話してまいりました。心当たりの方はどうぞご参考にされてくださいませ。